【糖尿病や代謝系の病気の治療法・予防対策】 代謝系の病気の種類と一覧表 【健康と病気】
代謝系の病気には糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、痛風、肥満症、やせ、低血糖症、糖原病、インスリノーマ、ガストリノーマ、ビタミン欠乏症・過剰症、高・低カルシウム血症、高・低カリウム血症、ヘモクロマトーシスなどがあります。
糖尿病
糖尿病とは、膵臓から分泌されるホルモンの一種であるインスリンが不足することによる疾患の一つです。
大きくインスリンが絶対的な欠乏による糖尿病と、相対的に不足するものがあります。
糖尿病の分類
糖尿病は大きく、絶対的にインスリンが欠乏する「Ⅰ型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)」と相対的にインスリンが不足する「Ⅱ型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)」に分類することができ、糖尿病患者の大部分はⅡ型糖尿病とされています。
この他、他の病気や薬剤が原因となっておこる糖尿病を「続発性糖尿病」として区分する場合があります。
・Ⅰ型糖尿病
Ⅰ型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)とは、膵臓におけるランゲルハンス島B細胞が破壊される事によるインスリンの絶対的な不足を示す糖尿病の一種です。
先天性でほとんどの場合20歳までに発症し、インスリンの注射がなければ極めて生命として危機的な状態にさらされる性質の糖尿病です。
なお、Ⅰ型糖尿病は糖尿病患者の10%程度を占めていて、生活習慣病には該当しません。
・Ⅱ型糖尿病
Ⅱ型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)とは、主にインスリンの分泌低下およびインスリン感受性低下という二つの原因からなる糖尿病です。
患者数が爆発的に増加している疾患で、日本国内においても数百万人の患者および1000万人を越える糖尿病予備軍がいるとされています。
遺伝的要素と生活習慣のふたつが絡み合う生活習慣病の一種です。
・続発性糖尿病
続発性糖尿病とは、他の病気や薬剤の服用などにより発生する糖尿病を指します。
続発性糖尿病を引き起こす原因として代表的なものに「クッシング症候群」「褐色脂肪腫」「肝硬変」「膵臓ガン」「筋ジストロフィー」などがあります。また、ステロイド剤の長期服用により続発性糖尿病を引き起こすケースもあります。
糖尿病の症状
一般的に糖尿病の症状としては、全身倦怠感、口の渇き、多尿、手足の痺れ、体重減少など様々な症状が見られます。
眼の症状・・・白内障、網膜症、近視
皮膚症状・・・皮膚感染症、湿疹
自律神経症状・・・頻脈、下痢、便秘、発汗障害
腎臓障害・・・腎不全(進展)
口腔症状・・・口内炎、虫歯
末梢神経症状・・・四肢の知覚障害(疼痛)
糖尿病の原因
続発性糖尿病の場合、それらが疾患や薬剤といった原因がわかりやすいのですが、Ⅰ型糖尿病およびⅡ型糖尿病は実際のところその原因が完全に究明されたわけではありません。
・Ⅰ型糖尿病の原因
Ⅰ型糖尿病は主に自己免疫の異常がその主要な原因と考えられています。
ただし、アジア系、アフリカ系の人が発症しているⅠ型糖尿病の中には明らかに自己免疫異常が認められないケースもありあます。
・Ⅱ型糖尿病の原因
Ⅱ型糖尿病の原因も明らかにされていませんが、Ⅱ型糖尿病の病態として「インスリンの分泌低下」および「インスリンの感受性低下」というように病態が分類できることからそれぞれに原因があるとされています。
一般的には遺伝的に糖尿病になりやすい特徴を持つ人が、糖尿病になりやすい生活習慣をもつことで糖尿病になりやすいと考えられています。
生活習慣面からのリスクファクターとしては、食事(肥満)、喫煙などが関連しているといわれています。
糖尿病の予防・診断
糖尿病の診断においては、尿中の糖化ヘモグロビンやフルクトサミンの測定などが行われます。
なお、血糖値検査においては、「糖尿病症状があり、任意の時刻に測定した血糖値が200mg/dL以上、または空腹時血糖値が126mg/dL以上」とされています。
糖尿病は血糖のコントロールがうまくいかなくなることにより、様々な合併症を引き起こします。
慢性的な合併症としては「腎臓」「神経」「眼」に対して非常に多くの影響を与えるとされています。
最悪の場合、失明、人工透析、四肢切断といった状態にまで進展するケースもあります。
また、急性の合併症として「低血糖性昏睡」「糖尿病性昏睡」など生命に関する合併症を引き起こします。
糖尿病の治療法
糖尿病の治療としては、食事制限、運動療法、薬物療法が主要です。薬物療法の場合は、インスリンや抗糖尿病剤などが投与されます。
高脂血症
高脂血症とは、血液中の総コレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)が増加した状態を指し、生活習慣病における基礎を成す疾患です。
なお、高脂血症は、他の病気により二次的におこる高脂血症もあり、代表的な疾患として肝臓・腎臓疾患、糖尿病、甲状腺機能低下症が挙げられます。
高脂血症の分類
高脂血症と一口にいっても「高LDLコレステロール血症」「低HDLコレステロール血症」「高トリグリセリド血症と」いった種類があり、WHO(世界保健機関)の基準に基づき日本動脈硬化学会が診断基準を定めています。
・高LDLコレステロール血症
高LDLコレステロール血症は血液中に存在する悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が140mg/dL以上が該当する高脂血症の種類です。
生活習慣による高脂血症の多くがこの高LDLコレステロール血症とされています。
他の検査値であるHDLやトリグリセリド(中性脂肪)性の高脂血症としても心疾患へのリスクファクターとしての面からも非常に重要度が高い疾患です。
・低HDLコレステロール血症
低HDLコレステロール血症は血液中に存在する善玉コレステロール(HDLコレステロール)が40mg/dL未満が該当する高脂血症の種類です。
特に女性において重要な心疾患リスクファクターとして認識されています。
・高トリグリセリド血症 (高TG血症)
高トリグリセリド血症 (高TG血症) とは、血液中に存在する中性脂肪(トリグリセリド)が150mg/dL以上が該当するタイプの高脂血症の種類です。
心疾患および血液疾患との関連性が指摘されています。特に、高トリグリセリド血症 (高TG血症) による動脈硬化との関連性が指摘されています。
高脂血症の症状
高脂血症は一般的に自覚症状は特にありません。
しかし、その分動脈硬化による心筋梗塞や狭心症といった恐ろしい病気につながる前兆(兆候)を把握できませんので血液検査などを通じて中性脂肪やコレステロールの値に注意するようにしましょう。
高脂血症の原因
高脂血症の原因となるコレステロールの増加原因としては、過食、動物性脂肪の過剰摂取、運動不足、肥満が挙げられます。
また、中性脂肪については、糖分の過剰摂取、アルコールの多飲、過食、運動不足などが挙げられます。
細胞膜やホルモンの原料となるコレステロールは「低比重リポタンパク(LDL)」と呼ばれ動脈硬化の原因となるのですが、健常な人の場合あまったLDLは高比重リポタンパク(HDL)により肝臓に回収されるので動脈硬化や高脂血症を引き起こす事はありません。
高脂血症となるのは、LDLコレステロールとHDLコレステロールのバランスが崩れる事によるもので、その原因はコレステロールを多く含む食品をとりすぎることにあります。
この他、二次性高脂血症と呼ばれる肝臓や腎臓疾患、糖尿病、甲状腺機能低下症などに起因して起こることもあります。
高脂血症の予防・診断
高脂血症の診断においては血液検査が有効です。
定期健康診断における血液検査においても、中性脂肪(トリグリセリド)、LDLコレステロール、HDLコレステロールの検査を行いますので、しっかりとチェックして異常な場合は医師の指導の下で適切な食事療法を行いましょう。
高脂血症の治療法
高脂血症の治療としては、最も一般的なのが食事療法です。
特にコレステロールを多く含む食品を制限するとともに、コレステロール吸収を阻害する役割がある食物繊維などを摂取して肥満を改善するのが一番です。
また、運動療法も中性脂肪(トリグリセリド)などの現象に効果があることが実証されています。
この他、薬物療法についても現在では有効な薬剤の開発が進んでおり効果的です。
痛風
痛風とは、血中の尿酸血が増加した状態(高尿酸血症)が長期化することにより、間接などに尿酸の結晶が沈着し、傷みの発作尾を起す疾患で、生活習慣病の原因の一つであるとされています。
痛風の症状
痛風の症状として関節における激烈な痛みおよび発熱が特徴です。
特に体温が低い部分ほど痛風の原因となる尿酸がたまりやすいために痛風の発作は主に足にでます。
通常最初に痛風発作が現れるのは足の親指の第二関節であるといわれていますが、症状が進む事で足の関節や膝の関節まで痛みはじめます。
痛風の発作による痛みは極めて強く風が吹いても痛いといわれるほど強い痛みを引き起こします。
なお、発作を繰り返す度に症状は悪化すると言われています。
痛風の原因
痛風の原因は尿酸が血中に過剰に存在する「高尿酸血症」が長期間続く事にありますから、この高尿酸血症が痛風における最大のリスクファクターといえます。
プリン体の摂取(過食や動物性タンパク質の過剰摂取、アルコール多飲)やストレス、肥満などが高尿酸血症を引き起こすとされています。
ただし、高尿酸血症=痛風というわけではなく、高尿酸血症の状態が長く続く人であっても実際に痛風の症状を発症しない人もいます。
また、逆に高尿酸血症でないにも関わらず痛風となる人も全体の1/4ほど存在しており、現在その研究が進められています。
痛風の予防・診断
痛風と高尿酸血症の関係性は完全ではないにしろ、指摘されています。高尿酸血症は血液検査における血清中の尿酸血中濃度が7mg/dLを越えると高尿酸血症と指摘されます。
痛風の治療法
痛風の治療としては、高尿酸血症に対する食事療法や運動療法、薬物療法(アロプリノールなど)が行われます。
また、痛風の発作時にはインドメタシンなどの炎症鎮痛剤が多く用いられます。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
甲状腺機能亢進症とは、バセドウ病またはグレヴス病と呼ばれ、血中に甲状腺ホルモンが過剰に存在する状態を指します。
甲状腺の肥大や発汗、動悸などの症状が現れます。
バセドウ病の原因
外部から侵入した非自己の物質に対して反応が起きるのが免疫ですが、体内に最初からある物質を誤って非自己として認識して抗体を作る場合があります。
これを自己免疫といい、バセドウ病はこの自己免疫が原因で起こります。
自己免疫が起きると血液中に甲状腺刺激物質(抗体)が増えて、甲状腺の働きが活発になりすぎて、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまいます。
バセドウ病の症状
20歳代から30歳代の女性に比較的多い病気ですが、男性にも少なくなく、あらゆる年齢層に発病します。
甲状腺が腫れ、動悸がし、脈拍数が増え、眼球が前方に突出し、ものが二重に見えたりすることもあります。
新陳代謝が活発になりすぎてエネルギー源を消費するのがこの病気の特徴なので、食欲が増してよく食べるのに、体重が減っていきます。
同じ理由で脈が速くなり動悸がし、発熱や発汗、疲労感や脱力感、神経過敏、不眠、月経異常、下痢、喉の渇きなどが現れます。
じっとしていても運動しているかのような変化が身体に現れてきます。不整脈が起こることもあります。
バセドウ病の治療法
根本的な治療方法はありません。抗甲状腺剤を使用したり、放射線ヨードを内服したりして、甲状腺ホルモンの生成と分泌を抑える治療を行います。
甲状腺を部分的に切除する手術も行われます。
高カリウム血症
高カリウム血症とは、腎不全や副腎の病気で尿へのカリウムの排出が減って、血液中のカリウム濃度が高くなる病気のことです。
高カリウム血症の原因
腎不全のためカリウムの処理能力が低下して排出に障害が起きたり、副腎の病気でアルドステロンの分泌が低下すると尿へのカリウムの排出が減って、血液中のカリウム濃度が上昇し、高カリウム血症となります。
血液が酸性の傾向になると細胞組織のカリウムが血液に流れ込みやすくなって血中のカリウム濃度が上がります。
高カリウム血症の症状
症状は筋肉の力の低下と、不整脈などの心臓の拍動の異常が中心となります。
症状が重いと危険な不整脈のために心臓停止が起きて生命にかかわります。
高カリウム血症の治療法
危険な病気です。原因となる病気も含めて、早急に治療します。
カリウムの摂取量を減らすとともに、尿や便へのカリウム排出を増やす薬剤を使います。
低カリウム血症
低カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が低下して、筋肉の力が落ち、悪化すると手足が麻痺してしまう病気のことです。
低カリウム血症の原因
カリウムは食物から摂取されて尿や便から排泄されます。
血液中のカリウム濃度が低下するのが低カリウム血症です。
主な原因は腎臓からのカリウム排泄量が増えて対外に多くが出てしまうことですが、カリウム摂取量が減ったり、嘔吐や下痢で消化液を失ったり、腎臓病や利尿剤使用などでも尿へのカリウム排出が増えて低カリウム血症が起こります。
また、クッシング症候群、悪性高血圧、慢性腎炎などでも起きます。
低カリウム血症の症状
筋肉の力が落ち、悪化すると手足が麻痺します。腎臓が尿を濃縮する作用も阻害され、薄い尿で頻尿となってしまいます。悪化すれば生命にかかわります。
低カリウム血症の治療法
原因となっている病気の治療をするとともに、食品や塩化カリウムを補給します。
高カルシウム血症
高カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が1デシリットルあたり10.5ミリグラム以上の場合を指します。
高カルシウム血症の原因
血液中のカルシウム濃度が1デシリットルあたり10.5ミリグラム以上の場合は高カルシウム血症です。
副甲状腺ホルモンが多量に分泌される原発性副甲状腺機能亢進症やビタミンAやビタミンDの過剰、あるいは悪性腫瘍に伴って血液中のカルシウムの濃度が高くなり、高カルシウム血症を起こします。
高カルシウム血症の症状
腎臓が尿を濃縮できないためにおきる脱水症状、食欲不振、嘔吐、便秘などの消化器症状や徐脈などの不整脈が現れたり、精神神経症状などが主なものです。
ひどいときには意識障害や昏睡状態に陥りますから早急に治療の必要があります。
高カルシウム血症の治療法
原因となっている病気を治療します。
強力な骨吸収抑制剤の注射、食塩水の点滴、利尿剤、副腎皮質ステロイド剤などが使用されます。
低カルシウム血症
低カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が1デシリットルあたり、8.5ミリグラム以下と、正常よりかなり少なくなることです。
低カルシウム血症の原因
血液中のカルシウムが1デシリットルあたり8.5ミリグラム以下と、正常よりずっと少なくなることです。
その原因となる病気は、ネフローゼ症候群、慢性腎不全、原発性副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症、低マグネシウム血症、一部の悪性腫瘍などです。
低カルシウム血症の症状
神経、筋肉が興奮しやすくなり、手足の先や口のまわりにしびれる感じがあります。
また、テタニー発作(手指が動かせなくなるもの)を起こすことがあります。精神神経症状、消火器症状、低血圧や不整脈などが現れることもあります。
低カルシウム血症の治療法
原因となっている病気を治療します。
カルシウム剤やビタミンD剤を服用し、テタニー発作を起こしている場合などは、注射でカルシウムを補給します。