嚥下障害をのある利用者に飲み物を提供する際に良く使用される 「とろみ剤」。このとろみですが現状ではいろんな課題があります。
1.バラバラの基準を使用している。
トロミはどの施設でもおおむね3段階に分類されていることが多い様です。 しかしこの段階の名称は施設ごとに異なり、
「ポタージュ状」
「はちみつ状」
「ヨーグルト状」
「ジャム状」
「マヨネーズ状」
・・・etc
など各施設でバラバラな基準を使っている現状があります。
そんな現状を変えるため、薄いトロミ、中等度のトロミ、強いトロミの3段階で統一しましょう! と日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が2013年に新たな区分分けをしています。
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類 2013
以前の日本では米国のNational Dysphagia Diet(2002)1)のような統一された嚥下調整食の段階が存在せず、地域や施設ごとに多くの名称や段階が混在していました。
急性期病院から回復期病院、あるいは病院から施設や在宅、またその逆の施設から病院の連携が普及している今日、統一基準や統一名称がないと摂食・嚥下障害者および食種や食形態の連携で不便な状態でした。
そこで、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会では、国内の病院・施設・在宅医療および福祉関係者が共通して使用できることを目的 とした、食事(嚥下調整食)およびトロミについての段階分類を示した「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013(通称:学会分類2013)」を作成しました。
とろみの3段階 とろみ早見表 水分 とろみ 表現 濃度
段階 | 段階1 薄いとろみ | 段階2 中間のとろみ | 段階3 濃いとろみ |
英語表記 | Mildly thick | Moderately thick | Extremely thick |
性状の説明 | ・「drink」するという表現が適切なとろみの程度 ・口に入れると口腔内に広がる液体の種類・味や温度によっては,とろみが付いていることがあまり気にならない場合もある ・飲み込む際に大きな力を要しない ・ストローで容易に吸うことができる |
・明らかにとろみがあることを感 じ,かつ「drink」するという表現が適切なとろみの程度 ・口腔内での動態はゆっくりですぐには広がらない ・舌の上でまとめやすいストローで吸うのは抵抗がある |
・明らかにとろみが付いていて,まとまりがよい ・送り込むのに力が必要 ・スプーンで「eat」するという表現が適切なとろみの程度 ・ストローで吸うことは困難 |
性状の説明 (見たとき) |
・スプーンを傾けるとすっと流れ落ちる ・フォークの歯の間から素早く流れ落ちる ・カップを傾け,流れ出た後には,うっすらと跡が残る程度の付着 |
・スプーンを傾けるととろとろと流れる ・フォークの歯の間からゆっくりと流れ落ちる ・カップを傾け,流れ出た後には,全体にコーテイングしたように付着 |
・スプーンを傾けても,形状がある程度保たれ,流れにくい ・フォークの歯の間から流れ出ない ・カップを傾けても流れ出ない(ゆっくりと塊となって落ちる) |
粘性値(mPa・s) | 50~150 | 150~300 | 300~500 |
LST値(mm) | 36~43 | 32~36 | 30~32 |
段階1 薄いとろみ (フレンチドレッシング状)
薄いとろみとは,中間のとろみほどのとろみの程度がなくても誤嚥しない症例(嚥下障害がより軽度の症例)を対象としている。
「drink」するという表現が適切なとろみの程度であり,口に入れると口腔内に広がる.飲み込む際に大きな力を要しない.コップを傾けると落ちるのが少し遅いと感じるが,コップからの移し替えは容易である。
細いストローでも十分に吸える.中間のとろみよりもとろみの程度が軽いため,コンプライアンスには優れる.液体の種類・味や温度によっては,とろみが付いていることがあまり気にならない場合もある。
中間のとろみを適用している症例では,適宜,薄いとろみでも安全に飲める症例かどうかの評価を行うことを推奨する。
段階2 中間のとろみ(とんかつソース状)
中間のとろみとは,脳卒中後の嚥下障害などで基本的にまず試されるとろみの程度を想定している.明らかにとろみがあることを感じるが,「drink」するという表現が適切なとろみの程度である。
口腔内での動態は,ゆっくりですぐには広がらず,舌の上でまとめやすい。
スプーンで混ぜると,少しだけ表面に混ぜ跡が残る.スプーンですくってもあまりこぼれないが,フォークでは歯の間から落ちてすくえない。
コップから飲むこともできるが,細いストローで吸うには力が必要なため,ストローで飲む場合には太いものを用意しなければならない。
段階3 濃いとろみ(ケチャップ状)
濃いとろみとは,重度の嚥下障害の症例を対象としたとろみの程度である。
中間のとろみで誤嚥のリスクがある症例でも,安全に飲める可能性がある.明らかにとろみが付いており,まとまりがよく,送り込むのに力が必要である。
スプーンで「eat」するという表現が適切で,ストローの使用は適していない。
コップを傾けてもすぐに縁までは落ちてこない。
フォークの歯でも少しはすくえる。
学会分類2013(食事)の0t として使用できる。
濃いとろみをとろみ調整食品で調整する場合,とろみ調整食品の種類によっては,付着性などが増強して,かえって嚥下しにくくなることがある。そのため,単に粘度のみを評価するのではなく,試飲して確認したうえで,とろみ調整食品を選択することが必要である。
とろみ剤の使い方 濃度や注意点を動画でわかりやすく
とろみの付け方
「とろみ剤ってどのように使うのですか?」「だまにならないようにするには?」初めてとろみ剤をご使用される方は、正しい情報を知りましょう!
とろみの粘度の目安
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の学会分類2013(とろみ)に合わせた各段階のとろみの状態です。
とろみはつけすぎると危険!正しい使い方と分量を知りましょう!
とろみ剤は、商品ごとに使用量が異なるため、ご利用の際は必ず正しい情報を確認し適切な量を使用してください。
●とろみの付き方は液体の種類によっても違います!
とろみの付き方は、液体の種類・温度・成分・によって違います。この違いや特性を知らずに使用すると、とろみが付き過ぎて様々な危険があります。