栄養マネジメント強化加算を算定する条件の一つにミールラウンドがあります。低栄養のリスクが中リスク者と高リスク者に対して週に3回以上、原則管理栄養士が行わなければなりません。
厚生労働省のミールラウンドに関する資料
栄養マネジメント強化加算を算定するにあたり、中・高リスク者に対して以下の対応を行わなければなりません。その中でミールラウンドに関する記述は黄色のマーカーの部分になります。
低栄養状態のリスクが、中リスク及び高リスクに該当する者に対し、管理栄養士等が以下の対応を行うこと。
イ 基本サービスとして、医師、歯科医師、管理栄養士、看護師、介護支援専門員その他の職種の者が共同して作成する栄養ケア計画に、低栄養状態の改善等を行うための栄養管理方法や食事の観察の際に特に確認すべき点等を示すこと。
ロ 当該栄養ケア計画に基づき、食事の観察を週3回以上行い、当該入所者の栄養状態、食事摂取量、摂食・嚥下の状況、食欲・食事の満足感、嗜好を踏まえた食事の調整や、姿勢、食具、食事の介助方法等の食事環境の整備等を実施すること。食事の観察については、管理栄養士が行うことを基本とし、必要に応じ、関連する職種と連携して行うこと。病欠等のやむを得ない事情により、管理栄養士が実施できない場合は、介護職員等の他の職種の者が実施することも差し支えないが、観察した結果については、管理栄養士に報告すること。なお、経口維持加算を算定している場合は、当該加算算定に係る食事の観察を兼ねても差し支えない。
ハ 食事の観察の際に、問題点が見られた場合は、速やかに関連する職種と情報共有を行い、必要に応じて栄養ケア計画を見直し、見直し後の計画に基づき対応すること。
ニ 当該入所者が退所し、居宅での生活に移行する場合は、入所者又はその家族に対し、管理栄養士が退所後の食事に関する相談支援を行うこと。また、他の介護保険施設や医療機関に入所(入院)する場合は、入所中の栄養管理に関する情報(必要栄養量、食事摂取量、嚥下調整食の必要性(嚥下食コード)、食事上の留意事項等)を入所先(入院先)に提供すること。
⑤ 低栄養状態のリスクが低リスクに該当する者については、④ロに掲げる食事の観察の際に、あわせて食事の状況を把握し、問題点がみられた場合は、速やかに関連する職種と情報共有し、必要に応じて栄養ケア計画を見直し、見直し後の計画に基づき対応すること。
ミールラウンドとは?
ミールラウンドとは食事観察のことで、施設利用者が食事の際に何をどのように食べているのか?咀嚼能力・口腔機能・嚥下機能・姿勢などに関して観察し評価することです。
ミールラウンドのやり方は?
特にこれといったやり方はなく、利用者の気になる点を中心に食事風景を観察すればよいだけです。定期的に観察していくと少しの違いに気づいたり、どうしてこうなっているのだろう?と疑問点も出てくるはず。そんな時は利用者や介護士・看護師とコミュニケーションをとるチャンス!管理栄養士の信頼度も上がってくるはずです。やったことがない、何をしたらよいかわからないと躊躇せずに、まずは一歩踏み出してみてください。
ミールラウンドを記録するための様式や書式はありません
日本栄養士会が令和3年度介護報酬に関する質問と回答(Vol.1)で以下のように回答しています。
Q13.栄養士会等で食事の観察についての様式を示す予定はありますか?
A.様式を示す予定はありません。なお、食事の観察について、食事の観察を行った日付と食事の調整や食事環境の整備等を実施した場合の対応を記録することとされています。
特に決まった記録方法や様式があるわけではないようです。厚生労働省の見解は以下の動画で確認できます。
この動画の中で厚生労働省の担当官の方がミールラウンドについて説明されていたので文字起こしをしました(4:50あたり)。
『週3回のミールラウンドで全部これ(※栄養状態、食事摂取量、摂食・嚥下の状況、食欲・食事の満足感、嗜好を踏まえた食事の調整や、姿勢、食具、食事の介助方法等の食事環境の整備等)を確認して、記録をしてとなると、中高リスクの人って施設に半分くらいになると思うんですけど、そんなのとてもじゃないけど出来ないってなると思うんですけど、この趣旨としては管理栄養士がしっかりと入所者の食事の観察を行ってくださいね、で、それで早めに観察によって変化を把握して適切なケアを行ってくださいねという趣旨ですので、一回一回にすべてを見る必要はありませんが、週3回ある中でこういったポイント(※栄養状態、食事摂取量、摂食・嚥下の状況、食欲・食事の満足感、嗜好を踏まえた食事の調整や、姿勢、食具、食事の介助方法等の食事環境の整備等)を見てくださいねということです。
で、一番聞かれるのがこの記録です。これを全部チェックリストとかにする必要があるんですかー?とかいうと、かなり負担になるかと思いますけども、基本的には該当する人たち(中高リスク)に対して食事の観察を行った日付のチェックくらいで問題ありません。で、実際にケアを行った場合は、記録を取るというのは栄養ケア計画でも変わりないと思いますので、そういったところは残して頂くことになると思いますけども、そんなに記録とかの負担がないような形で手順には書いておりますので、そこも確認していただければと思います。』
記録に関しては「日付・何か食事の調整としてケアしたことは必要」「記録が負担になるようなことを想定していない」。
趣旨は「管理栄養士が実際に利用者の近くに行って、食事を食べているところを自分の目で確認して、栄養ケア計画に反映させていくこと。」のようです。
記録は必要ですが趣旨を理解していれば難しく考える必要はなようです。かといって記録がないと実地指導や監査の時に証明ができないので記録は残しておかなければなりません。
老健管理栄養士の記録方法
厚労省の見解でも、「記録が負担になるようなことを想定していない」ので、簡単な記録用紙やExcelでチェック表を用いて管理する方法もあります。
私の施設では介護ソフト「ほのぼの」を導入しています。ミールラウンドの記録は次のように行っています。
①エクセルでカレンダー式のチェック表を作り、ミールラウンドを行った日に〇でチェックをする。
②特変や記録に残しておいた方が良いことは「ほのぼの」のケースに入力しています。
まとめ
そもそのなぜミールラウンドが追加されたのか?「現場に行かない。食事風景を自分の目で見ていない。利用者の生の声を聴いていない。」管理栄養士が多いことが原因だと思います。週3回ミールラウンドは必要なこととは思いますが記録は時間をとられるし面倒です。ただし加算を算定するのであればその面倒な作業をいかに効率よくやるのか?管理栄養士の腕の見せ所ですね。