「日本人の食事摂取基準(2020年版)高齢者に関する主な改定ポイントは?」
主な改定点は、
・高齢者を65~74歳、75歳以上の2つに区分。
・生活習慣病における発症予防の観点からナトリウムの目標量引き下げ。
・重症化予防を目的としてナトリウム量やコレステロール量を新たに記載。
・フレイル予防の観点から高齢者のタンパク質の目標量を見直し。
などが挙げられます。
厚生労働省の資料 「高齢者」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586580.pdf
「フレイル」は以下のように紹介されています。
対象とする個人及び集団の範囲としては、「高齢者においてはフレイルに関する危険因子を有していても、おおむね自立した日常生活を営んでいる者及びこのような者を中心として構成されている集団を含むものとする。具体的には、歩行や家事などの身体活動を行っている者であり、体格が標準より著しく外れていない者とする。フレイルについては、現在のところ世界的に統一された概念は存在せず、フレイルを健康状態と要介護状態の中間的な段階に位置づける考え方と、ハイリスク状態から重度障害状態までをも含める考え方があるが、食事摂取基準においては、食事摂取基準の対象範囲を踏まえ、前者の考え方を採用する。」
「高齢者」は以下のように紹介されています。
我が国では急速に高齢化が進展しており、平成29 年の高齢化率(65 歳以上人口割合)は27.3%、75 歳以上の人口割合は13.3% となっている)。
近年、超高齢社会における栄養の問題として、健康寿命の延伸や介護予防の視点から、過栄養だけではなく、75 歳以上のいわゆる後期高齢者(以下「後期高齢者」という。)が陥りやすい「低栄養」の問題の重要性が高まっている。
脳卒中を始めとする疾病予防の重要性は言うまでもないが、後期高齢者が要介護状態になる原因として無視できないものとして、「認知症」や「転倒」と並んでフレイル(frailty)があり、低栄養との関連が極めて強い。また、高齢者の身体機能障害の危険因子、転倒の危険因子として加齢に伴う筋力の減少又は老化に伴う筋肉量の減少(以下「サルコペニア」(sarcopenia)という。)も注目されている。この病態はフレイルとも関連が強く、転倒予防や介護予防の観点からも重要である。
また、認知症は、要介護状態に至る原因の一つである他、医療、介護、福祉、その他多くの分野に関わるという点で、超高齢社会が抱える大きな課題である。最近の調査によると、認知症の有病率は、65 歳以上の高齢者では15% にも及ぶと推定されている2)。高齢者の更なる増加が予測されている我が国にとって、認知症予防の重要性は言うまでもない。
そこで、本項では、各栄養素の食事摂取基準の項における要点を整理するとともに、フレイルとそれに関連するサルコペニアの予防及び認知症並びに認知機能障害の予防と栄養素等との関連について、最新の知見を紹介する。
日本人の食事摂取基準(2020年版) 高齢者の改定ポイント まとめ
【策定方針】 |
策定の目的に「高齢者の低栄養・フレイル予防」が追加されました。 |
・健康の保持・増進 |
・生活習慣病の発症予防 |
・生活習慣病の重症化予防 |
⇓ |
・健康の保持・増進 |
・高齢者の低栄養予防・フレイル予防 |
・生活習慣病の発症予防・重症化予防 |
※ たんぱく質、カルシウム、ビタミンD等にフレイル予防の記載が追加されました。 |
【年齢区分】 |
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高齢者の年齢区分が変更され、前期高齢者と後期高齢者が区分されました。 | ||
年齢(歳) | 年齢(歳) | |
18~29 | 18~29 | |
30~49 | ⇒ | 30~49 |
50~69 | 50~64 | |
70以上 | 65~74 | |
75以上 |
【目標BMI】 |
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フレイル予防を考慮し、65~69歳の目標とするBMIの範囲の下限が引き上げられました。 | ||||
年齢(歳) | 目標とするBMI(kg/m2) | 年齢(歳) | 目標とするBMI(kg/m2) | |
18~49 | 18.5~24.9 | ⇒ | 18~49 | 18.5~24.9 |
50~69 | 20.0~24.9 | 50~64 | 20.0~24.9 | |
70以上 | 21.5~24.9 | 65~74 | 21.5~24.9 | |
75以上 | 21.5~24.9 |
【たんぱく質】 |
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フレイル及びサルコペニアの発症予防を考慮し、50歳以上の目標量の下限値が引き上げられました。 | ||||
たんぱく質維持必要量は、0.65から男女共全年齢区分で同一の0.66に変更されました。 | ||||
年齢(歳) | 目標量(%エネルギー) | ⇒ | 年齢(歳) | 目標量(%エネルギー) |
18以上 | 13~ | 18~49 | 13~20 | |
20(16.5) | 50~64 | 14~20 | ||
65以上 | 15~20 |
【ナトリウム】 |
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食塩相当量の目標量が引き下げられました。 | ||||
高血圧・CKD重症化予防のための量が追加されました。 | ||||
→高血圧及び慢性腎臓病(CKD)の重症化予防のための食塩相当量の量は男女とも6.0g/日未満とした。 | ||||
高齢者の極端なナトリウム制限(減塩)は注意が必要です。 | ||||
→高齢者では食欲低下があり、極端なナトリウム制限(減塩)はエネルギーやたんぱく質を始め多くの栄養素の摂取量の低下を招き、フレイルにつながることも考えられる。したがって、高齢者におけるナトリウム制限(減塩)は、健康状態、病態及び摂食量全体を見て弾力的に運用すべきである。 | ||||
性別 | 目標量 | ⇒ | 性別 | 目標量 |
男性 | 8 | 男性 | 7.5 | |
女性 | 7 | 女性 | 6.5 |
【コレステロール】 |
脂質異常症の重症化予防を目的とした量が新たに設定されました。 (飽和脂肪酸の脚注に記載) |
→脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい。 |
【ビタミンD】 |
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目安量が引き上げられました。 | ||||
「日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえ、適度な日照を心がけ、ビタミンD摂取においては、日照時間を考慮に入れることが重要である。」 | ||||
年齢(歳) | 目安量(μg/日) | ⇒ | 年齢(歳) | 目安量(μg/日) |
18以上 | 5.5 | 18以上 | 8.5 |
【クロム】 |
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耐容上限量が新たに策定されました。 | |
年齢(歳) | 耐容上限量(μg/日) |
18以上 | 500 |