刻み食は危険!! ソフト食を導入するには? 定義や作り方は?
私の施設では、約10年前に刻み食を廃止して、ソフト食を導入しました。
そこで、私が刻み食を廃止して、ソフト食を導入した経緯を説明したいと思います。
はじめに
新しくソフト食を導入するに当たり大きな壁になるのが、厨房職員(委託業者)と施設職員に説明して、理解を得て、納得してもらう事だと思います。
説得ではなくて、納得してもらう事が重要です。
・ソフト食とはどういうものか?
・刻み食がなぜ危険なのか?
・なぜソフト食を導入する必要があるのか?
などなど
ソフト食の導入など栄養士1人で出来るはずもありません、、、、
まずは、味方をたくさん作ることを給食会議から始めました。
「施設全体で取り組むぞ!!編」
○給食会議で施設職員にソフト食を導入したい事を説明しました。
「現在、常食、粗刻み食、刻み食、ミキサー食の提供を行っていますが、キザミ食では見た目も悪く、のどごしもいいとはいえません。
また、嚥下障害のある利用者には誤嚥性肺炎の危険がとても高いと考えられます。
今後、安全においしく食べることのできる食事の提供をできればよいと考えています。
まずは職員の理解を得るために他職種参加のソフト食試食会を実施しながら利用者に提供できればと思います。
ソフト食とは大変難しく、手間隙もかかりますので、厨房スタッフと検討しながら早期に実現できるようにと考えています。
また、むせ込みや誤嚥のおそれがある入所者へ、摂食・嚥下機能評価等も同時におこなえれば、より良い食事の提供ができると思います。」
・今までのキザミ食
○ 口の中に食べ物のかすが残りやすい
○ 食塊を作りにくい
○ 見た目が悪く食欲がわかない。
○ 食べ物としてきちんと判断されにくい
○ 危険である
・食べやすい(嚥下しやすい)食事とは
○ 口腔で食塊を形成しやすく、咽頭を滑らかに通過することを視点において調理し、食事を提供する
① 適度な粘度があり、食塊形成しやすい
② 口腔や咽頭を変形しながら滑らかに通過する
③ 密度ができるだけ均一である
④ べたつかず、のどごしが良い
※硬さ(食品の硬度)
べとつかない・付着性(口腔内や咽頭での食品の付着しやすさ)
まとまりやすい・凝縮性(口腔内でバラけない、まとまりやすさ)
・ソフト食とは
○ 舌で押しつぶせる程度の硬さであるもの
○ すでに食塊となっているような形のもの(口腔内でバラバラにならない)
○ すべりがよく、移送しやすいもの
https://kanrieiyoushiram.com/softtigai-post-422/
「厨房職員に理解・協力してもらうぞ編」
○厨房職員に、なぜ必要なのか?どういった事をするのか?勉強会を行いました。
「ソフト食の導入・刻み食の廃止について
現在提供している刻み食は誤嚥の危険性が高く、見た目も悪く食欲もわきません。
でも、刻み食に変わるものがありませんでした(あっても当施設で導入が難しいもの)。
しかし、今回のミキサー食を固形にするものであれば導入できると考えました(安全かつ見た目もよく味も損なわない)。
まず厨房・栄養士で試食と勉強会をおこない、どのようなものか理解をしていただきたいと思っています。」
★なぜ刻み食が悪い(危ない)のか?
・ 見た目が悪く食欲がわかない。(目で食事と認識できない)
・ 口腔内に残渣物が残る。
・ 口腔内でバラバラになり食塊を作りにくい。
・ 誤嚥の危険性が高い。
・ メリットは簡単にできる。
★導入する意味(メリット) 見た目、食感、食べやすさの改善
・口腔機能に問題がある方へ見た目よく安全でおいしい食事の提供。(食事の味付けは入所者・家族から評判良いです。)
・今後介護度が高くなり、今よりもさらに刻みやミキサーの方が増えると予想される。そのニーズに対応でき施設のPRにもなる。
・誤嚥が減り退所者が減少。(誤嚥性肺炎は高齢者死亡の4割に上る。)
・残菜の減少。喫食率の増加。
・入所者にとって一番の楽しみはやはり食事です。食事は「楽しみ」でなければならない。
★ソフト食(嚥下に良い食事)とは
・ 舌で押しつぶせる程度の硬さであるもの。(適度な硬さがある)
・ すでに食塊となっているような形のもの。(口腔内でバラバラにならない)
・ すべりがよく、移送しやすい。(のどの通りがよい)
作り方 ミキサー食にゲル化剤をいれ80℃以上に加熱
・ 食材とだし汁とソフティア(ゲル化剤・粉)をミキサーにかけます。
・ 80℃以上になるまで加熱します。(スチコンでもできます。)
・ 型に流し粗熱をとり冷蔵庫で冷やします。(約1時間で固まります。)
・ 適度な大きさに切り盛り付ける。(50℃以下では溶けません。)
★今後の課題
・ 施設栄養士、厨房職員、施設職員、全員の理解、協力。
・ 厨房内での理解、協力。
・ 厨房業務の大幅な見直し。残業体質の改善(1日のタイムスケジュール)。
・ 下処理、調理方法の工夫。
・ 栄養士は献立、食材の見直し。切り込み、盛り付けの負担の軽減。
・ マニュアルの作成。
★今後の予定
・厨房職員、委託会社との話し合い。
・ 施設職員への試食、勉強会。
・ 試験的導入、入所者への試食(週に1回昼食1品)
・ 本格導入(毎日1品から始めて、徐々に増やしていく)
「新たな試みのため、始めは手間もかかり業務負担も増えかなり大変だと思いますが、要領がわかり、流れが確立されれば、今より業務しやすくなると考えています。
また、入所者や家族にも喜ばれ、やりがいにもつながると考えています。
導入の際には増員や機材購入は行わない予定で考えていますが、まずは現状でどこまでできるか。
現状でできなければどこを改善すればよいか(機材の購入・増員も含めて)。
みんなで検討していきたいと思います。
ご協力よろしくお願いします。」
最後に
その後、全職員に対して勉強会を行った後、ソフト食の導入に踏み切りました。
厨房が慣れて対応できるまでは、週1回・一品から初めて、徐々に増やしていきました。
厨房職員の負担の軽減も考え、ゲル化剤の選定やソフト食の既製品の導入、カット野菜や加工済み・調理済み食品など、厨房職員と一緒に思考錯誤をしながら、今では主食から副食まで、彩の良いソフト食を作る事が出来ています。
しかし、最初からうまくいったわけではありません。
事前準備をしっかりして、あせらず少しずつ、施設全体で取り組んだ結果だと思っています。
ソフト食を新規導入するのは大変な事とは思いますが、施設の食の中心は誰ですか?
管理栄養士が自ら進んで動かなければ、他に誰が動きますか??